12.7社会を勉強する意味と理由

更新日 2021年6月27日




東大の卒業生にアンケートを取る中で一番意外だったのは「今になってやっておけばよかったと思う教科」が社会であるということです。

東大の卒業生の実に50%近くが社会をやっておけばよかったと後悔しているのです(文系13人、理系28人の回答者でしたが、それでも社会が多いことには変わりありません)

私はてっきり英語が首位にくるものだと思っていました。



個別に聞くと、特に世界史をやっておけばよかったと答えてくれた東大生が多かったです。


学生のころよりも、世界を意識するようになったからかもしれません。

海外の人と話していると、思ったよりも世界史の話が出てきます(もちろん毎回ではありませんが)

私が会ったイギリス人は初対面で 「シェイクスピアの一説を暗記していてソラで語れる」と、自慢してきました。

海外の人は歴史を非常に大事にしており、歴史に詳しい人は教養のある人とみなす文化があるように思います。


それは単に学歴としての意味ではなく、歴史から教訓を学んでおり正しい選択をできる人、とみなすからではないでしょうか?

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」の言葉の通り、歴史からは現代にも活かせる色んな示唆が出てきます。
  • 農耕によって、計画的に財産を作り、貯めることができるようになったことから格差は生まれた。財産が格差を生んだ。
  • どんなに安定した政治システムでも最大で200年しか続いていない。
  • 報酬が統治のカギ。土地がメインの報酬であった時代には、日本統一後に報酬の問題が浮かび上がる。
  • 経済や産業は競争によってこそ成長する。鎖国は一時的には安定をもたらすが、いずれ外敵によって崩される。現在の米国、英国における保護主義の流れと、中国の台頭をどう捉えるべきだろうか。
  • 世界では、市民が血を流しながら民主権、投票権を獲得してきた。日本だけが外国によって強制的に民主化され、民主権、投票権を獲得した。皮肉にも市民の血を流していないから投票権に対する価値認識が低いのではないか?



また、1000年経っても人って変わらないなーなんて感想を持つこともあります。

和歌で歌われるのは読んでいるこちらが恥ずかしくなるような恋愛話ばかりですが、よく考えると、J-popだってほとんどが恋愛の歌です。

有名な平家物語の冒頭も、現代語風に訳すと「チョーシにのっている人も長くは続かない」で、現代にあってもおかしくなく感じます。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。


見方は色々ですが、歴史をただの暗記科目にせず、現代への教訓や、現代/未来について考えるための材料と考えたとき、歴史はとっても意味があるし、おもしろいものです。



例として東大の日本史の過去問を見てください。




「知識を暗記しているか?」ではなく、「なぜ?」「意図は?」を聞いてきています。

そして問題の内容は、我々が固定的だと思っている教育や軍隊のあり方が「いかに歴史情勢や政府の意図によってうつろいやすく変わるか」を主張するかのようです。

東大は、きっと歴史を通して受験生に現代の当たり前と思うことについて考えてほしいのだと思います。


現代に活かせる教訓を探したり、未来をちょっと想像してみるための材料として、歴史を捉えてみたらより歴史の勉強が意味のあるもののように思えるかもしれません。